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強力で長時間作用型の新規エイズ治療候補薬・islatravir(EFdA)の開発とNCGMにおける臨床研究

2021年4月1日

国立国際医療研究センター(NCGM)・満屋 裕明 研究所長の研究グループは、国内の有機合成企業グループとの共同研究で開発したエイズ治療候補薬「核酸系逆転写酵素阻害剤」(EFdA; 一般名:islatravir(ISL))を Merck & Co., Inc (米国メルク社) に導出、ヨーロッパにおける第Ⅰ相臨床試験において、単回の内服で前例のない強力な効果が確認されました。この効果は、現行1日1回投与のTDFやTAFよりも強力で、多剤耐性HIV変異株にも強力な活性を発揮します。副作用は軽微で、2017年11月、アメリカ、イギリス、フランスなどで、第Ⅱb相臨床試験が開始され、著明な抗HIV-1効果が観察され、かつ副作用は殆ど見られず、2021年3月現在、臨床試験は順調に進行中です。

メルク社はサル免疫不全ウイルス(SIV)の継続経直腸接種サルにISLを1週間に1度内服投与することで、SIV感染が完全にブロックされることを報告しました。このデータは、ISLがHIV-1感染ハイリスクにある人々を週1回の内服投与だけで完全にHIV-1感染から防御する可能性を強く示唆しました。さらにラットへの週に1度の静脈注射実験において、特殊製剤化ISLでHIV-1の増殖を完全に抑制する有効血中濃度が半年から1年にわたって維持されることも確認され、次いで36人の健康被験者にISLを含有する「インプラント:埋込型製剤」が投与され、HIV感染を3ヶ月にわたり効果的にブロックし、1年にわたってHIV-1感染から防御する可能性が示されました。

強力で長時間作用型のISLは、HIV治療と感染予防において「first-in-class」の抗HIV-1治療薬として、ゲームチェンジャーあるいはパラダイムシフトになると期待されており、日本でもイノベーティブな創薬が可能であることが示されました。Merck Sharp & Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co., Inc は、ISLの治療に関する複数の第Ⅲ相臨床試験を国際共同試験として2020年2月から開始し、NCGMは安定期の患者でのISLへのスイッチ試験 (責任医師 岡 慎一 エイズ治療・研究開発センター長) に参加して既に患者を組み入れ、今後初回治療としての組み入れも予定されております。また、HIV感染予防として、曝露前予防 (PrEP) の臨床試験が今後NCGMで開始されます。

2021年3月、米国メルク社はギリアド・サイエンシズ社と共同で、ISLとHIV-1カプシド阻害剤 (lenacapavir) の合剤を、新規の長期作用型治療薬とする開発を開始しました。

満屋 裕明 研究所長の研究グループが本プロジェクト「新規エイズ治療候補薬・ISLの開発とNCGMにおける臨床研究」において、ISLとその一連の誘導体の生物活性・化学構造の関連を明らかにするなかで、「B型肝炎ウイルス(HBV)感染症に対する新規の治療薬の研究・開発」の領域においても、ISLの派生化合物でHBVに対して強力な活性を示すE-CFCPのデザイン合成と開発に成功しつつあることは、特筆に値します。




本件に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
広報企画室 広報係長
西澤 樹生(にしざわ たつき)
TEL:03-3202-7181 (内線 5097)※平日9:00~17:00
E-mail:press@hosp.ncgm.go.jp

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