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RhoH遺伝子を欠損したマウスではTH17細胞分化が亢進し、乾癬様慢性皮膚炎を発症する

2018年10月22日

国立国際医療研究センター

米国科学誌『The Journal of Allergy and Clinical Immunology』掲載

RhoH deficiency induces psoriasis-like chronic dermatitis by promoting TH17 cell polarization

(要旨)

国立国際医療研究センター研究所免疫病理部の鈴木春巳部長、為広紀正上級研究員らの研究グループでは、アレルギー応答や細菌感染防御などで中心的な役割を果たすTH17細胞が分化する仕組みを解明し、RhoHの量が乾癬の重症化に影響していることを明らかにしました。

RhoHは、T細胞受容体シグナル伝達経路におけるアダプター蛋白であり、T細胞の初期分化に必要ですが、活性化したエフェクターT細胞における役割は不明でした。今回、研究グループは、RhoH遺伝子を破壊したマウスがヒトの乾癬症状とよく似た慢性皮膚炎を自然発症したことから、乾癬の病態形成におけるRhoHの役割について検討しました。その結果、この乾癬様皮膚炎の病態形成にはTH17細胞が重要な役割を果たしている事が分かりました。すなわち、RhoHを失うとTH17細胞分化のマスター分化因子であるRORgtの蛋白量が増大することによりTH17細胞が増加し、皮膚の上皮細胞の増殖を促すインターロイキン22の産生を上昇させることを見出しました。

本研究成果は、乾癬の重症化に関わる重要な仕組みを発見したものであり、新たな治療法の確立や重症化の予測に貢献することが期待されます。

研究の背景

乾癬は欧米ではポピュラーな皮膚の病気であり(人口の2~3%)、わが国においても近年その患者数は増加の一途を辿っており現在約10~20万人が罹患しているといわれています。乾癬の一種である膿疱性乾癬は特定疾患に定められており、慢性的な皮膚炎を伴う難病です。乾癬は表皮細胞ケラチノサイトの異常増殖、および遷延化する慢性炎症という2つの大きな特徴を持っており、最近の研究から、表皮細胞の異常増殖においてはインターロイキン22の関与が重要であり、慢性炎症においては炎症性サイトカインであるTNFαの関与が重要であることがわかってきました。病態の形成には、サイトカインなどの免疫活性化物質を産生するヘルパーT細胞のうち、インターロイキン22やインターロイキン17を作り出すことに特化したTH17細胞の関与が重要であることが知られていますが、TH17細胞が分化する分子機構についてはまだ不明な点が多く残されています。したがって、TH17細胞の分化機構を解明することは乾癬のみでなく、アレルギーや感染症、多発性硬化症などの自己免疫疾患の効率的な治療法の開発にも役立つと考えられます。

これまでの当研究グループによる研究等により、血球系細胞で特異的に発現している低分子G蛋白質であるRhoHは、胸腺におけるT細胞分化に極めて重要な役割を持つことが分かっていました。しかしながら、ナイーブT細胞が末梢組織でエフェクターヘルパーT細胞へと分化する際に、RhoHがどのような役割を果たすのかは不明であり、疾患との関係については殆ど分かっていませんでした。

本研究の概要

たなRhoH遺伝子欠損マウスを作成しました。その結果、特定の遺伝背景の下で、ヒトの乾癬症状に酷似した慢性皮膚炎を自然発症することを発見しました。病変部位にTH17細胞の集積がみられたため、RhoHとTH17細胞分化の関係について検討したところ、RhoHがナイーブT細胞からエフェクターTH17細胞への分化を抑制していることが分かりました。

そこで、RhoHがTH17細胞分化を抑制する分子メカニズムを遺伝子欠損細胞などを用いて詳細に検討した結果、RhoHがTH17分化のマスター転写因子であるRORgt蛋白の分解を促進し、転写活性を抑制する経路に関与していることが明らかになりました。さらに、実際の乾癬患者の血中T細胞の遺伝子発現を調べたところ、乾癬症状が重篤なグループでは軽度のグループよりもRhoHの遺伝子発現量が少ないという相関関係があることが明らかになりました。(下図参照)

また、インターロイキン22受容体αをRhoH欠損マウスに投与したところ、皮膚炎は軽症化し、インターロイキン22受容体αが乾癬様皮膚炎の治療効果を持つ事を示しました。

RhoH遺伝子を欠損したマウスではTH17細胞分化が亢進し、乾癬様慢性皮膚炎を発症する

(図)RhoHは血球系の細胞で発現している遺伝子であり、T細胞でのRhoHの発現が低下するとTH17細胞が増加します。H17細胞が増加すると、表皮細胞の増殖や炎症応答を促進するインターロイキン22(IL-22)等が大量に産生され、表皮が肥厚して乾癬の病態が形成されます。したがって、RhoHの発現が低い人が乾癬になると重症化する恐れがあります。一方で、インターロイキン22受容体α(IL-22RA)はIL-22の作用を中和し、症状を軽減します。

本研究の意義・今後の展望

本研究により、ヘルパーT細胞のひとつである「TH17細胞」の分化に、RhoHが重要な役割を果たしている事が分かりました。また、RhoHの発現が低下するとTH17細胞が増加し、大量の炎症性サイトカインを産生することにより乾癬様皮膚炎の病態形成に寄与することが明らかになりました。

今後、ヒトでのTH17細胞分化におけるRhoHの役割やIL-22RAの中和効果を詳細に解析することで、乾癬に対する重症化予測のバイオマーカーや新規治療薬の開発に貢献することが期待されます。

発表雑誌

雑誌名:The Journal of Allergy and Clinical Immunology
論文名:RhoH deficiency induces psoriasis-like chronic dermatitis by promoting TH17 cell polarization

参照URL

The Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://www.jacionline.org/

本件に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター研究所 肝炎・免疫研究センター 免疫病理研究部
責任著者役職名 免疫病理研究部長 鈴木 春巳(すずき はるみ)
電話:047-373-5539(内線 1463)        FAX:047-372-3501
E-mail: lbhsuzuki@hospk.ncgm.go.jp
〒272-8516 千葉県市川市国府台1-7-1

取材に関するお問合せ先

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