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ホーム > トピック・関連情報 > プレスリリース > 熱帯熱マラリア原虫の赤血球内ステージで作用する新規転写調節因子の同定

2013年9月6日

独立行政法人 国立国際医療研究センター

米国科学誌『PLOS ONE』掲載

研究の背景

マラリア原虫は進化的に他のモデル生物から遠く、そのゲノムには他種生物で既知の転写調節因子と相同性をもつ遺伝子が存在しない。そのため、ヒト赤血球に寄生している原虫がどの様な転写調節因子によって遺伝子の発現を制御しているのか全く解明されていなかった。

目的

原虫から直接、遺伝子発現制御領域に結合するタンパクを精製、同定し、その因子が実際に、遺伝子の転写を活性化する機能を持つのかどうかについて検討し、転写制御因子の存在とその制御機構を明らかにする。

方法

赤血球内寄生期に発現する遺伝子の発現制御領域に特異的に結合するタンパクを、培養原虫核抽出物から5段階の液体クロマトグラフィーによって精製し、質量解析によって同定した。同定された因子については、これを原虫細胞に過剰発現させ、発現制御領域のコントロール下にある遺伝子の発現を亢進する作用があるかについて検討した。

結果

発現制御領域に特異的に結合する新規タンパクが同定された。これをPREBP (Prx Regulatory Element Binding Protein)と命名した。 PREBPと相同性のあるタンパクの遺伝子はヒトには認められず、クリプトスポリジウム、バベシア、タイレリアなどの一部の寄生虫のみに認められた。PREBPを原虫細胞に過剰に導入すると、PREBP結合領域の支配下にあるレポーター遺伝子の発現量が、非導入時と比較して約20倍亢進した。

結論

PREBPは赤血球内に寄生する熱帯熱マラリア原虫細胞内で転写制御活性を持つ、全く新しい転写調節因子である。

本研究の概要・意義

熱帯熱マラリア原虫の遺伝子発現制御領域に特異的に結合する因子を同定し、これをPREBP (Prx Regulatory Element Binding Protein)と命名した。PREBPは、既知の転写調節因子とは相同性を持たない独自のタンパクであった(図1)。PREBP遺伝子は、クリプトスポリジウム、バベシア、タイレリアなどの一部の寄生虫のゲノムにおいても存在し、PREBPはこれらの寄生虫特有の因子であることが判明した。さらに原虫細胞内でPREBPが転写調節機能を持つ事を世界で初めて明らかにした(図2)。

図1.マラリア原虫新規転写調節因子PREBPの精製と同定

マラリア原虫新規転写調節因子PREBPの精製と同定

培養マラリア原虫より核抽出液を調製し、タンパク質の性質の違いを利用したクロマトグラフィーによる分離を経て、遺伝子転写調節領域に結合するタンパクを精製し、質量分析法で同定した。このタンパク質は既知の転写調節因子とは相同性を持たない、新しい因子であった。

図2.PREBPはマラリア原虫細胞内で転写活性化機能を持つ

PREBPはマラリア原虫細胞内で転写活性化機能を持つ

過剰のPREBPをマラリア原虫細胞内に導入すると、PREBPのターゲットとなる遺伝子調節領域を介したレポーター遺伝子が強く発現し、PREBPが原虫細胞内で転写調節因子として働くことが証明された。

今後の展望

本研究の成果により、PREBPをターゲット分子とした、ヒトに対して副作用の無い新しい抗マラリア薬の開発に繋がる可能性が期待される。

発表雑誌

雑誌名:PLOS ONE
論文名:Identification of a Novel and Unique Transcription Factor in the Intraerythrocytic Stage of Plasmodium falciparum
掲載日9月5日午後5時(米国東部夏時間)に掲載予定
著者:安田(駒木) 加奈子, 奥脇 暢, 永田 恭介, 河津 信一郎, 狩野 繁之.
責任著者:安田(駒木) 加奈子

参照URL

http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0074701

本件に関するお問い合わせ先

国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部
マラリア学研究室長:安田(駒木) 加奈子(やすだ こまき かなこ)
電話番号:03-3202-7181(内線番号: 2878)
E-mail:komaki@ri.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

取材に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
広報係長:三山 剛史(みやま つよし)
電話:03-5273-5258(直通) <9:00~17:00>
E-mail:tmiyama@hosp.ncgm.go.jp

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